先日、知人からつぎのように尋ねられた。佐々木高政の『和文英訳の修業』の予備編には一見すると似たような文例が並べられているのだが、これらは一体どういう観点からまとめられた文例なのだろうか。とくに「VII 『助動詞の主な用法』」「XI 英作文にひんぱんに用いる『不定詞』の用例」「XV 『直接話法』と『間接話法』」の文例はどのような文法上の分類を反映したものなのか。このような問い合わせを受けたのだった。

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それに対して私はこう答えた。英文法の書籍を参考にしながら、予備編の各章の文例を分類しうるかをまとめればよい。では、どういう英文法の書籍がよいだろうか。佐々木が英文法書として一読を強く勧めた*1 Jespersen の Essentials of English Grammar は内容が興味深いが、しかし、これを手に取る人は今の時代は少ないと思われる。そうなると、『総合英語Forest』のような高校生向けの学習参考書を手に取るのが無難だろう。それをもとに文例の文法を一つずつ確認すればよい。そうすることで各文例を並べて学習者に提示した佐々木の意図を理解できるのではないか。

Essentials of English Grammar (Alabama Linguistic & Philological Ser: V)
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そう答えたものの私には気がかりなことがあった。それは、高校生向けの学習参考書によって佐々木の意図をどこまで適切に理解できるかという問題である。佐々木が英語の文法書として紹介したJespersen の Essentials of English Grammarに類するような英文法書によらないと、『和文英訳の修業』「予備編」の文例だけでなく「基本編」と「応用編」の記述を充分に分析し整理できないかもしれない。
このように考えた結果、まずは『和文英訳の修業』「基本編」の文例を安藤『現代英文法講義』によって整理してみることにした。この本には他の文法書の記述に対する評価や批判が盛り込まれており、また、例文の出典が明記されている箇所がいくつもある。この本を使えば、佐々木の意図を尊重しながら、佐々木の文例を任意の文章と入れ替えることが容易になるだろう。

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こうして『和文英訳の修業』「予備編」の情報をまとめるページを作成するに至った。解説ページといっても良いだろう。
ページを作成するにあたり三つのことを気をつけた。一つは各文例について事細かく説明しないようにすることである。たとえばこの文例は基本文型の何にあたり、この単語の品詞は何で、といったことまで書かないようにする。もっとも、これは程度の問題であるから、必要な箇所では込み入った説明をしていることもある。二つ目は前の版との異同を明記することである。私の手元には最新版の四訂新版と一つ前の版である三訂新版があるので、三訂新版から四訂新版に改訂されるにあたってどの文例があらたに挿入されたのか、または少々改変されたのかを提示することができる。佐々木の意図を読み取る上では重要な手がかりとなるだろう。三つ目は、文例の出典と思われるものを見つけたときにはそれを紹介するということである。佐々木は「あちらの辞書,新聞雑誌,小説戯曲のたぐい」から文例を集めたと述べている*2。佐々木の依拠した文献と必ずしも一致しないかもしれないが、佐々木の読書量の広さと深さを知るには参考になるだろう*3。
ページの記述はまだ完全ではないので、折に触れて追記していく。
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