ようこそ
これは、Dvorak Advent Calendar の第17日目のエントリーです。
目次
3. Dvorak配列の欠点と対策
3.1. 直接入力時の欠点と対策
3.2. 日本語入力時の欠点と対策
3.2.1. 欠点
3.2.2. 対策
3.2.2.1. 対策上重要な点
3.2.2.2. DvorakY
3.2.2.3. ACT と ACT09
3.2.2.4. DvorakJP
3.2.2.5. JLOD配列
最後に取り上げる Dvorak 配列の拡張入力方式は JLOD配列 (Japanese Layout on Dvorak)です。
JLOD配列は、様々な拡張入力を整理し統合したうえで、Dvorak 配列に盛り込んだ入力方式です。どういうことか説明しましょう。先に説明した ACT (AZIK on Dvorak) を改変した入力方式がACT配列(M1版)です。この入力方式に、後に触れる蒼星という入力方式の仕様を一部組み込んだ入力方式が、JLOD配列なのです。
ACT の仕様を念頭に置くと、 JLOD配列の特徴はつぎの八点にまとめられます。
- ACT と同様、C をカ行用のキーとする。
- ACT と同様、促音「っ」を単打で出力する。
- ACT と同様、ann や inn を一打で入力できる「撥音拡張」を導入している。
- ACT と同様、ai や ou を一打で入力できる「二重母音拡張」を導入している。
- ACT とは異なり、長音符を出力するキーを二つ設けている。
- ACT とは異なり、ヤ行とパ行の文字については、他の行の文字と同様に右手から打鍵し始める。
- ACT と似た手段で、拗音を出力しやすくしている。その中には、拗音化キーを使用するものや、頻出する拗音を二打だけで入力するものがある。
- ACT の「その他の頻出文字列の省略打ち」に対応する、「頻出語句の省略打ち」を導入している。
これらの特徴から分かるのは、ACT と JLOD配列は確かに似ている部分があるものの、異なる部分もやはりある、ということです。
ACT と同一の設定については説明を省略して、それ以外の設定を見ていきましょう。
長音符は P と -のどちらでも出力できます。前者の設定は、外来語を出力しやすくするために導入されました。ローマ字入力でいう、"a-" や "o-" が含まれることばが入力しやすくなるでしょう。
JLOD配列の重要な特徴は、他の行の文字と同様にヤ行とパ行の文字を右手から打鍵し始めることです。ヤ行はVを、パ行はFを使用して出力するのです。この設定は、蒼星という Dvorak 配列の拡張入力方式の仕様を引き継いだものです*1。参考に、その蒼星の仕様の一部を表形式にして掲載しましょう*2。Vの位置に y が、Fの位置に p が置かれています。
5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ai | ou | ei | uu | ui | p | G | k | R | L |
A | O | E | U | I | D | H | T | N | S |
ann | onn | enn | unn | inn | B | M | W | y | Z |
要するに、他の文字と同様、ヤ行とパ行の文字を出力するときも、右手と左手を交互に使用します。
次に、拗音の出力方法についてざっと見てみましょう。拗音を出力するために人さし指と薬指を用いる点は同様です。ただし、パ行の文字については、すぐ前に説明したとおり、Fを使用して出力します。ACTの「拗音の打ち方(外来語)」に相当する JLOD配列の設定は、一打目のキーと同じ段のキーを打鍵します。詳しくは「拗音の打ち方(う行+ぁぃぅぇぉ)」と「拗音の打ち方(え行+ゃぃゅぇょ)」を参照して下さい。ACT の「拗音+ク・ツの省略打ち」は、JLOD配列においては、規則性を徹底したものとなっています。JLOD配列独自の設定としては、通常のローマ字入力では4打鍵必要なキーストロークを3打鍵に減少させる「母音+「き」「く」「つ」「っ」の省略打ち」があります。どれも規則的に設定されていますので、仕様を一度通読してみて下さい。
JLOD配列は、「頻出語句の省略打ち」というものを導入しています。これはACT の「その他の頻出文字列の省略打ち」に相当します。思うに、JLOD配列の「頻出語句の省略打ち」の方がより整理されています。例として、以下にそのキーバインドの一部を表形式で示しましょう。どうでしょうか。
一打目のキー\二打目のキー | T | N | S |
---|---|---|---|
F | いたしまして | いたしました | いたします |
G | になりまして | になりました | になります |
C | しまして | しました | します |
R | りまして | りました | ります |
B | でして | でした | です |
M | まして | ました | ます |
W | なっておりまして | なっておりました | なっております |
以上、DvorakJP の説明のときのように、ACT と比較対照しながら、JLOD配列を概説しました。上記の説明を参考にして、実際に ACT と JLOD配列をためしに使用し比較してみてはいかがでしょう。
3.2.2.6. 私がおすすめする入力方式
以上、これまで提案されてきた、Dvorak配列の日本語用拡張入力方式を紹介しました。
それでは、Dvorak配列を導入して間もない方向けに、私のおすすめの日本語入力用拡張入力方式を2つ挙げましょう。一つはDvorakYです。これは、通常のDvorak 配列を習得した人にとって、カ行と拗音の打ちにくさを最も手軽に解消する入力方式です。Dvorak配列が日本語入力に適していないなんて!とお嘆きの方、この DvorakY をぜひ導入してみて下さい。
もう一つは DvorakJP です。先の説明では触れませんでしたが、右手が自然とホームポジションに移動する入力方式です。カ行を打ちやすくした上、拗音拡張、二重母音拡張や撥音拡張を最小限取り入れていますから、DvorakY では満足しない方向けといえるでしょう。Google 日本語入力や Mozcに DvorakJP を導入する設定ファイルが公開されるなど*3、注目されている入力方式なのです。
DvorakY と DvorakJP に飽き足らない方は、これまで説明してきました、さまざまな入力方式を検討してみて下さい*4。
*1:蒼星配列を取り込んだACT配列での句読点: みかログ参照。現在、「蒼星」のウェブサイトは閉鎖されています。
*2:詳しくは、DvorakJ に収録している蒼星の設定ファイルをご覧下さい。
*3:Sooey - Dvorak Advent Calendarという素晴らしい...とMozc用DvorakJPローマ字テーブル - blob globを参照。
*4:それでも満足できない方は、Dvorak配列の各日本語入力用拡張配列の関係を図で示してみた - blechmusik2の日記で言及しているY拡張Dvorakローマ字かな変換ルールを試してみてはどうでしょう。