ようこそ
これは、Dvorak Advent Calendar の第13日目のエントリーです。
目次
3. Dvorak配列の欠点と対策
3.1. 直接入力時の欠点と対策
3.2. 日本語入力時の欠点と対策
3.2.1. 欠点
3.2.2. 対策
3.2.2.1. 対策上重要な点
3.2.2.2. DvorakY
3.2.2.3. ACT と ACT09
ここでは、ACT と ACT09 を概説します。
ACT は、Dvorak 配列に様々な拡張入力を盛り込んだ入力方式です。ACT の特徴はつぎの七点にまとめられるでしょう*1。
- C をカ行用のキーとする。
- 拗音を出力しやすくしている。その中には、拗音化キーを使用するものや、頻出する拗音を二打だけで入力するものがある。
- ヤ行とパ行の文字の一部を出力しやすくしている。
- 促音「っ」を単打で出力する。
- A N N や I N N を一打で入力できる「撥音拡張」を導入している。
- A I や O U を一打で入力できる「二重母音拡張」を導入している。
- W T で「わたし」を入力できる「特殊拡張」を導入している。
これらを順に検討します。
C をカ行用のキーとするということは、先に取り上げた DvorakY と同様です。
ACT の特徴は、さまざまな手法を用いて拗音を出力しやすくしていることです。まず、拗音用キーとして、同じ段のキー(2)とキー(4)を使用します。それぞれの設定表を順に掲載しましょう。わかりやすくするため、拗音化キーには★をつけました。
5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
★ | C | R | L | ||||||
★ | T | N | S | ||||||
★ | Z |
5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
P | G | ★ | |||||||
D | H | ★ | |||||||
B | M | ★ |
上記の拗音キーを打鍵した直後に、特定のキーを打鍵すれば、「拗音+ク・ツの省略打ち」という機能を利用できます。これにより、「りょく」や「ぎゃく」を3打鍵で出力できるようになります。
中指か小指を拗音キーとして使用することで、頻出する拗音を二打だけで入力できます。たとえば、C Lと入力すれば「きょう」を、N T と入力すれば「にゅう」を出力します。
このように、ACT には、少ない打鍵数で拗音を出力できる仕組みが搭載されているのです。
ヤ行とパ行の文字の一部については、右手で母音キーを打鍵できますので、出力しやすくなっています。この設定では、左手の指に対応する右手の指で母音キーを打鍵することになります。
促音「っ」を単打で出力するというのは、M式とよばれる入力方式の影響を受けたものでしょう*2。ACT では、左側の上端にある ' で促音「っ」を入力します。
二重母音拡張と撥音拡張は、直接的には、 AZIK と呼ばれる入力方式から受け継いだ機能です*3。もとを辿れば、M式と SKY 配列の入力方式に行き着くと見て良いでしょう*4。二重母音拡張と撥音拡張のどちらも、子音用のキーを打鍵したあとに使用することになります。通常の母音キーの上下に二重母音拡張と撥音拡張を記載した設定表を以下に掲載します。
5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ai | ou | ei | uu | ui | |||||
A | O | E | U | I | |||||
5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A | O | E | U | I | |||||
ann | onn | enn | unn | inn |
この二重母音拡張と撥音拡張は、原則として、DvorakJP や JLOD 配列といった入力方式にも引き継がれていきます。
特殊拡張とは、ACT の作者により選び出された文字列を、少ないキーストロークで出力できるよう設定したものです。
以上、ACT の設定をかいつまんで説明しました。
では、ACT09 とは何でしょうか。こちらは、ACT の設定をより一貫するよう調整した入力方式なのです。ACT の「ヤ行、パ行の互換打ち」と ACT09 のそれを比較すれば分かるように、ACT09 とは、一定の規則性を ACT 以上に維持するよう、作者が注意して作成した入力方式といえるでしょう。
次回は、DvorakJPを取り上げます。
*1:ただし、ここでは説明の都合上、特定の設定のみを取り上げます。設定の全仕様については、ACT総合解説書をご覧下さい。
*2:「日本文入力方式と鍵盤方式の最適化」 (ヒューマンインタフェース特集)( http://www.ykanda.jp/input/m/m.htm ) の 2051 ページ( http://www.ykanda.jp/input/m/morita51.jpg )参照。
*3:「英文入力との両立を維持したローマ字入力の改善について」 Improvement of Romaji Typing Method Compatible with English-Language typing、「学習の移行性を重視した拡張ローマ字入力 : AZIK」 Easy to Learn Extended Romaji Input Method : AZIK、AZIK総合解説書を参照。
*4:「日本文入力方式と鍵盤方式の最適化」 (ヒューマンインタフェース特集)( http://www.ykanda.jp/input/m/m.htm )と、「日本語入力用新キー配列とその操作性評価」 Design of a Key Layout for the Roman Alphabet Besed Japanese Input System and Its Evaluationを参照。