ようこそ
これは、Dvorak Advent Calendar の第12日目のエントリーです。
目次
3. Dvorak配列の欠点と対策
3.1. 直接入力時の欠点と対策
3.2. 日本語入力時の欠点と対策
3.2.1. 欠点
Dvorak 配列を日本語入力のローマ字入力として使用すると、欠点が主として四点見えてきます。まずはその欠点を列挙しましょう。ここでは、説明上、Yをヤ行用のキーと拗音用のキーとして機能を区別しています。
- K(カ行用のキー)が入力しにくい
- Y(ヤ行用のキー)が入力しにくい
- Y(拗音用のキー)が入力しにくい
- P(パ行用のキー)が入力しにくい
この欠点を理解するために、Dvorak 配列を日本語入力のローマ字入力用の配列として、つぎのように見てみます。ただし、左から数えて五つのキーまでのキーは左手で、残りのキーは右手で打鍵することとします。表を見やすくするために、小指を5とし、人さし指を1および2として、数字を割り振ってみます。
5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
' | 、 | 。 | パ行 | ヤ行/拗音 | F | ガ行 | C | ラ行 | L |
ア段 | オ段 | エ段 | ウ段 | イ段 | ダ行 | ハ行 | タ行 | ナ行 | サ行 |
; | Q | J | カ行 | X | バ行 | マ行 | ワ行 | V | ザ行 |
この表から分かるのは、パ行、ヤ行および拗音、カ行のどのような文字でも、左手でキーを連打しなければならないということです。日本語のことばは、基本的に、子音(Consonant)と母音(Vowel)の組で構成されています。上記の表より、右手が担当する行の文字ならば、右手→左手と入力することでCVを出力できます。しかし、それ以外の文字については、左手→左手と入力しなければ、CVを出力できません。左右の両手を交互に使用して文字を出力できないのが、このパ行、ヤ行および拗音、カ行の文字なのです。
そうはいうものの、人によっては、ヤ行やパ行のキーの入力しにくさを問題として認識する必要が無いのかもしれません。それは、どちらの行の文字も、出現頻度がそれほど高くないということが原因ではないでしょうか。もっとも、ヤ行の文字のうち、人さし指を連続して使用する「ゆ」は特に入力しにくいです*1。また、ホームポジションから手をそれほど動かさなくてよいパ行の文字の中では、「ぴ」や「ぷ」が入力しにくいです。
他方、それなりに出現頻度が高いカ行のキーと拗音のキーの入力しにくさは、きちんと認識しなければならないでしょう。左手の人さし指を多用するのです。試しに、「きょ」(KYO)と入力してみて下さい。左手人さし指が下段から上段へとせわしなく動き回ることに気づくでしょう。これらについては、対策をきちんと講じなければならそうです。
これらの欠点をどうにかして克服できないでしょうか。克服できれば、日本語入力のローマ字入力において、Dvorak 配列が使いやすい配列となるでしょう。
3.2.2. 対策
3.2.2.1. 対策上重要な点
対策を考える上で重要になるのは、つぎの二つでしょう。
- カ行の文字と拗音の文字を入力しやすくする。
- 余裕があるならば、ヤ行とパ行の文字を入力しやすくする。
あらかじめ結論を先取りして言ってしまいましょう。私が今後取り上げる日本語入力用に拡張しているDvorak配列用の派生においては、カ行用のキーとしてCを使用します*2。拗音用のキーとしては、それぞれの配列で異なるキーを打鍵することになります。ヤ行用とパ行用のキーを移動させる配列はそれほど多くありません*3。
3.2.2.2. DvorakY
対策の一つ目として、2ちゃんねるのおまえら、DVORAK配列つかってますか?スレッドで公開された DvorakY というものを紹介しましょう*4。
以下の表をご覧下さい。
5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
' | 、 | 。 | パ行 | ヤ行/拗音 | F | ガ行 | カ行 | ラ行 | L |
ア段 | オ段 | エ段 | ウ段 | イ段 | ダ行 | ハ行 | タ行 | ナ行 | サ行 |
YA | YO | YE | YU | YI | バ行 | マ行 | ワ行 | V | ザ行 |
これでは少々わかりにくいままかもしれません。そこで、「段」を該当するアルファベットに置き換えます。
5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
' | 、 | 。 | パ行 | ヤ行/拗音 | F | ガ行 | カ行 | ラ行 | L |
A | O | E | U | I | ダ行 | ハ行 | タ行 | ナ行 | サ行 |
YA | YO | YE | YU | YI | バ行 | マ行 | ワ行 | V | ザ行 |
これでDvorakYの全体像が明らかになりました。カ行用のキーとしてCを使用します。ヤ行および拗音については、中段のA O E U Iという並びに対応する、下段に並んでいるYA YO YE YU YIというキーを使用します。まさに、作者が言うとおり、「やゆよが1打で」出力できることと、「拗音が2打で入力できるのが特徴」*5的です*6。パ行については、何も策を講じていません。
DvorakY の利点は、それほど多くのことを覚えなくともよいことにあります。Dvorak配列を習得している方なら、上記の説明を読んだだけで完全に理解し終えたでしょう。Dvorak配列を習得している方なら、DvorakY を知った日のうちに、すぐに習得できるのではないでしょうか。
追記:Yをヤ行用のキーと拗音用のキーに二分して説明するようにしました。
次回は、Dvorak 配列の日本語入力用派生として有名な DvorakJP を取り上げます。
当初の予定を変更し、次回は、ACTとACT09を取り上げます。