見出しの文は"Power On English Reading"の'The Typewriter―A Lesson in Design'の件 まとめ編 - blechmusik2の日記にて取り上げた章の中に記述されているものだ(73ページ)。私はこの一文を読んだときに「かなり面食ら」*1った。驚かない人もいるようだが……*2
文脈を考慮すると、ここでは Both A and B ではなくて Neither A nor B を使用すべきだろう。安藤『現代英文法講義』490ページを参照*3。なお、both...not が部分否定で云々*4という話については、安藤『現代英文法講義』660-662ページを参照。否定の作用域ということばを聞いたことがない人にとっては、こちらの説明はやや難しいかもしれない。
この教科書に掲載されている文法上の誤りは、教科書の編纂者により作り出された。なぜそう言うことが出来るのか?この一文に対応するノーマンの書籍*5の記述が文法的に誤っていないからそう言えるのだ。ノーマンはこう書いている*6
Both the circular layout and the piano keyboard proved awkward.
教科書の編纂者は "proved awkward" を "were not easy to use" と書き換えたのみだ。 Both... という記述を見落としていたのだろう。結果として Both A and B were not ... という記述が教科書に掲載されたのである。
この部分を日本語に訳出する高校生は、上記のことを念頭に置いてくださいね。
*1:高校英語教科書におけるABC順キー配列 - yasuoka の日記
*2:よろしければ配列について教えろ その8のレス609--613。
*3:Swan の書籍への参照が見つかるが、これは第二版に対する参照である。2005年に出版された第三版に対する参照ではない。第三版では 110 (6) で both の否定構造が扱われている。[asin:0194420981:detail][asin:4767430240:detail]
*4:よろしければ配列について教えろ その8のレス615--617
*5:Don Norman, The Design of Everyday Things (Basic Books, 2002) [asin:0465067107:detail]
*6:p. 146.