はじめに
Dvorak 配列用の日本語拡張入力方式には ACT*1 や JLOD配列*2 があります。ここでは重要と思われる各種拡張に従い、 Dvorak 配列用日本語拡張入力方式を整理してみます。検討対象の日本語拡張入力方式は、DvorakJP、DvorakY*3、ACT、蒼星*4、JLOD配列です。検討の対象とする Dvorak 配列は以下の通りです。
C のキーで K を入力
DvorakJP | DvorakY | ACT | 蒼星 | JLOD配列 | |
---|---|---|---|---|---|
C のキーで K を入力できる | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Dvorak 配列を日本語入力で使用するときの弊害としてあげられるのは K の位置です。Dvorak 配列で KA KO KE KU KI を入力するには、 それぞれ QWERTY 配列でいえば VA VS VD VF VG を打鍵します。なれればそれほど問題はないのでしょうが、右手で K を入力できればよいと思いませんか?これについては、どの日本語拡張入力方式でも右手が担当する C のキー(QWERTY 配列でいえば I のキー)で入力することができるようになっています。
Shift キーの併用
DvorakJP | DvorakY | ACT | 蒼星 | JLOD配列 | |
---|---|---|---|---|---|
Shift キーを使用しない | ○ | ○ | ○ | × | ○ |
蒼星は Shift キーとその他キーを組み合わせることによって、さまざまな入力を可能としています。以下の表では、 Shift キーと組み合わせることにより入力することが可能なものを△で示すこととします。
蒼星以外の日本語拡張入力方式では Shift キーを全く使用しません。
二重母音拡張
DvorakJP | DvorakY | ACT | 蒼星 | JLOD配列 | |
---|---|---|---|---|---|
ai ou ei を一打で入力できる | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
ai ou ei を一打で常に入力できる | × | × | × | ○ | × |
uu ui を一打で入力できる | × | × | ○ | ○ | ○ |
uu ui を一打で常に入力できる | × | × | × | ○ | × |
これは二重母音拡張とよばれるものです。二重母音拡張に一番強いのは蒼星であることがわかります。蒼星ではShift キーを使用せずに ai ou ei uu ui を一打で常に入力できます。
撥音拡張
DvorakJP | DvorakY | ACT | 蒼星 | JLOD配列 | |
---|---|---|---|---|---|
[aiueo]nn を一打で入力できる | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
[aiueo]nn を一打で常に入力できる | × | × | ○ | ○ | ○ |
「あん」や「おん」を一打で入力できる撥音拡張の実装については、上記の表を見ていただければ理解していただけることでしょう。
拗音拡張関係
DvorakJP | DvorakY | ACT | 蒼星 | JLOD配列 | |
---|---|---|---|---|---|
Y を Y 以外のキーで入力できる | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Y を Y 以外のキーで常に入力できる | × | ○ | × | ○ | ○ |
y[aiueo] を常に一打で入力できる | × | ○ | × | × | × |
[dhtns]yなどを常に一打で入力できる | × | × | × | △ | × |
Dvorak 配列用の日本語拡張入力方式の特徴はこの拗音拡張関係です。実装については DvorakY とその他日本語拡張入力方式に二分できます。
ここで TYA と出力することを考えてみます。 DvorakY では T + YA という入力、つまり左右の手で一打ずつの入力によって TYA を出力します。その他日本語拡張入力方式では TY + A という入力、つまり右手で二打の入力後、左手で一打の入力によって TYA を出力します。ただし、蒼星では厳密には右手で二打を入力するとは限らないでしょう。
DvorakY | DvorakY以外の日本語拡張入力方式 | |
---|---|---|
一打目の入力 | T | T |
二打目の入力 | YA | Y |
三打目の入力 | A |
長音拡張
DvorakJP | DvorakY | ACT | 蒼星 | JLOD配列 | |
---|---|---|---|---|---|
[aoeui]- を一打で入力できる | × | × | × | △ | × |
[aoeui]- を一打で常に入力できる | × | × | × | △ | × |
長音拡張は蒼星の得意分野です。
促音拡張
DvorakJP | DvorakY | ACT | 蒼星 | JLOD配列 | |
---|---|---|---|---|---|
[aoeui]xtu を一打で入力できる | × | × | × | △ | × |
[aoeui]xtu を一打で常に入力できる | × | × | × | △ | × |
xtu を一打で入力できる | × | × | ○ | △ | ○ |
促音拡張も蒼星の得意分野です。
特殊拡張
DvorakJP | DvorakY | ACT | 蒼星 | JLOD配列 | |
---|---|---|---|---|---|
特殊拡張の存在 | × | × | ○ | ○ | ○ |
特殊拡張の多くは、右手で二打入力することによって、あたかもその倍近く打鍵しなければならない文字を出力します。たとえば、JLOD配列では WT という二打を入力するだけで、 あたかも"natteorimasite" と14打分を入力したこととします。この特殊拡張を覚えかつ自在に使用できれば便利ですよ。
おわりに
このエントリーでは P や句読点の位置について言及せず、ごく基本的なことに焦点を絞り簡単な比較を行いました。これからわかるとおり、Dvorak 配列の日本語拡張入力方式といっても、その特徴は様々な点でことなっています。もっともよいと考える日本語拡張入力方式を各自使用すればよいのではないでしょうか。