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blechmusikの日記

キー・カスタマイズ・ソフトウェア "DvorakJ" の覚え書きをはじめとして様々なことを書いています。

将来の消費増税判断に関する覚え書き

 先日首相が法律通りに消費税の税率引き上げを判断した*1。これについて私は首相の会見当日に次のようにつぶやいた。

 ここでは今回の首相の判断に注目し、さらなる消費税増税を警戒する有権者が今後注意を払うべきように思われる事項を整理しておきたい。


 昨日の読売新聞朝刊記事「検証 消費増税(上)首相「8%」苦渋の決断 5兆円「甘利案」を採用」によれば、財務省の木下康司次官らは

  • 消費税増税せず->日本国債の信認が損なわれる->長期金利が上昇する->景気に冷や水を浴びせる

という図式を受け入れるよう7月の参院選前に首相を説得していた。
 首相の周辺人物によると、消費税増税を判断するにあたって首相は次の二つの考えを抱いていたという。

  • 1.増税せず->(?)-> 長期金利が上昇する?という疑念
  • 2.増税先送りのための法改正は与党運営上難しいとの見解

 読売新聞の記事にもあるとおり首相の考えはこのように整理できるだろう。

  • 1.は財務省の主張に幾ばくか理解を示したもの
  • 2.は今後の与党運営を考慮して与党内の潜在的な反安倍勢力に配慮したもの

 首相の考えがこの通りならば、まず、増税に伴う税収減は二の次の問題だった。首相は、増税が結果として景気に冷や水を浴びせうることよりも、増税しないことが結果として景気に冷や水を浴びせうることを相対的に重視したのである。
 それでは長期金利の上昇という疑念を首相が払拭するにはどのような条件が揃わねばならないのだろう?私には皆目不明であるが、消費税率のさらなる引き上げに際して同様の判断枠組みが用いられるのであればこの点が特に重要だ。
 次に与党内の潜在的な反安倍勢力に目を転じよう。彼らは景気に冷や水をより多く浴びせるのは増税よりも税率の維持だと考えているのか。いや、熊谷亮丸氏のようにそもそも増税と景気悪化は関係ないことだと考えているのだろうか*2。国会議員が重視するものは国債金利の安定から社会保障財源の安定まで多岐にわたるのかもしれないが、増税に対するメリットとデメリットについて与党内の潜在的な反安倍勢力が何を考えているのか知りたいものだ。
 要するに、長期金利の上昇の恐れが消費税率維持の懸念材料の一つだったならばそのような恐れが解消される条件を追究しなければならず、そして潜在的な反安倍勢力への配慮がもう一つの懸念材料だとすると、消費税増税のメリット・デメリットを彼らがどう考えているかを明らかにして彼らの動向を注視しなければならないだろう。



 ところで財務省が安倍首相を説得したのはいつだろう?読売新聞は先の記事で「財務省の木下康司次官らは7月の参院選前……首相官邸で安倍に説明した」と書いている。7月の参議院選挙といえば21日に投開票が実施されたのだった(総務省|第23回 参議院議員通常選挙 発表資料)。これと首相動静を照らし合わせると、説得が行われたのは1月と6月のいずれか、または両方であろう。木下財務次官が官邸で安倍首相と会談したのは、1月分は7日、10日、15日、20日、24日、6月分は13日と25日であった。
 私は東京都議選から間もない6月25日がその時ではないかと思っている。首相動静によると午後2時6分から約40分間、朝日新聞社が首相に対する単独インタビューを実施していたのだが、翌日26日の朝日新聞朝刊に掲載されたそのインタビューの要旨にはこう書いてある*3

消費税は基本的には来年4月から上げていく。ただ、景気が腰折れして税収が落ちたのでは元も子もない。国の信認を守りながら景気を腰折れさせない、税収が増えていく道を考える。慎重な判断が求められる。

 ここでいう「国の信認を守りながら」というのが具体的に何を念頭においていたのかは定かではないが、いわゆる財政規律の維持という意味だろうか。この記述からは、来年4月に消費税を増税しようと考えていたことと、増税による税収減に特に注意を払っていたことが分かる。この要旨と10月1日の会見で示された首相の判断と比較すると、増税による税収減への懸念が相対的に強く表われていたといえそうだ。
 それから、このインタビュー終了から20分後の午後3時9分から麻生財務相、木下主計局長(当時)、田中主税局長が首相と40分間会談をしている。ここで財務省は増税による税収減を心配している場合ではなく「国の信認を守」らねば元も子もないと首相に訴えたのではないか。先の会見で「財政規律」「財政健全化」「財政再建」と表現を変えながら国の信認維持なるものの重要性を説くことになる首相は、この時点で財務省の主張に一定の理解を示したと思う。


 なお、今日付の読売新聞朝刊記事「検証 消費増税(下)首相「法人減税譲れない」」によると、反安倍勢力の動向に首相が危機感を抱くようになったのは9月下旬らしい。そのきっかけは9月20日の12時54分から13時04分に行われた、町村信孝自民党インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム座長と安倍首相との会談のようだ。


 もっとも以上の話は昨日と今日の読売新聞の記事の内容が正しいという前提をおいて考えたものであるから、この記事の内容が正しくなければ別の見解が出てくるだろう。このことを付言しておきたい。