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blechmusikの日記

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消費税引き上げ問題のキーパーソンに関する覚え書き

目次

  • はじめに
  • 首相と官邸で会談を行ったキーパーソンとそれから推察すること
  • 消費税引き上げ問題に対して自民党税制調査会は首相の意向を理解しようとしない
  • おわりに

はじめに

 消費税引き上げ問題のキーパーソンとは誰なのだろうか。消費税引き上げの判断を行う安倍首相がその人なのは間違いあるまい。ほかには消費税引き上げによって「歳出権」の拡大が達成される財務省*1の大臣と事務方、とりわけ木下康司財務事務次官もそうだろう。消費税引き上げに積極的な姿勢を示し続けている自民党税制調査会もキーパーソンといってよいと思う。このエントリーではこれらの人物を消費税引き上げ問題のキーパーソンと仮定して話をすすめよう。

 そのように考えていた時に、日本経済新聞の一昨日の記事「消費増税・法人減税 首相「一体」譲らず 財務省・税調を押し切る」と「官房長官、消費増税『正直なところ総理は決断していない』」を読んだ。


 これらの記事を読んでいくつか疑問を抱いたが次の三点が特に気になった。

  • 首相が木下康司事務次官を同席させて麻生財務相と官邸で会談したことが参議院選挙後にどれくらいあったのか
  • 消費税引き上げ問題の報道が多くなった今月中、首相が自民党税制調査会の会長または幹部と官邸で会談したのはいつか
  • 消費税引き上げ問題に対して自民党税制調査会は首相の意向をどの程度酌んでいるのか

 これらの点について新聞報道から分かることをまとめてみる。

首相と官邸で会談を行ったキーパーソンとそれから推察すること

 ここでは今年の参議院選挙後に報じられてきた官邸への出入りの情報をもとに表形式でまとめてみた。日時と会談の相手の出典は、その日付の翌日付けの産経新聞東京朝刊【安倍日誌】である。括弧内の記述は他紙の情報に基づく。9月18日の情報のソースは前述の日経新聞の記事であり、9月20日の情報は9月21日付けの朝日新聞の記事 朝日新聞デジタル:企業減税に首相固執 「賃金に波及」好循環狙う 消費税、来春8% - ニュース である。

日付 時刻 会談の相手
2013-07-24 14:28-15:42 麻生太郎財務相と木下康司財務事務次官
15:43-15:46 麻生太郎財務相
2013-07-30 10:17-11:15 麻生太郎財務相甘利明経済財政担当相、財務省の木下康司事務次官、香川俊介主計局長、田中一穂主税局長
11:15-11:16 麻生太郎財務相甘利明経済財政担当相、財務省の田中一穂主税局長
11:16-11:25 麻生太郎財務相甘利明経済財政担当相
2013-08-30 16:26-16:50 財務省の木下康司事務次官、田中一穂主税局長ら
17:11-17:44 麻生太郎財務相
2013-09-03 13:55-14:09 財務省の木下康司事務次官、古沢満宏財務官、山崎達雄国際局長ら
14:10-15:01 麻生太郎副総理兼財務相、甘利氏、松元崇内閣府事務次官、木下氏ら
15:02-15:37 麻生太郎財務相甘利明経済財政担当相
15:38-15:45 麻生太郎財務相
2013-09-11 15:54-16:42 自民党の高村正彦副総裁と野田毅税制調査会
2013-09-18 14:16-15:03 麻生太郎財務相(当初は木下康司事務次官らも同席する予定だった)
2013-09-20 16:18-17:09 麻生太郎財務相甘利明経済財政担当相(10分間を除いて財務省の事務方が同席?)


 この表を見て気づくのは、首相と会談をする麻生財務相の見解には財務省の事務方の影響がかなり反映されているのではないかということだ。木下康司財務事務次官が席を外している状況での麻生財務相と首相の会談時間は一旦伸びたものの、その傾向の維持が今では難しくなっている。その例外といえるのは9月18日の会談であって、この際には一時間近くにわたって首相と麻生財務相が二人だけで会談していた。首相が意図的に事務方の出席を断ることで二人だけの会談がはじめて達成されたのである。その後はというと、前述の朝日新聞の記事によれば、9月20日の会談当日に麻生財務相と木下康司事務次官財務省幹部は官邸の麻生財務相の部屋で作戦を練っていたという。これは万が一9月18日のように事務方の出席が断られても問題が生じないよう、麻生財務相財務省の意向をしっかりと代弁できるよう準備したのだろうか。
 これを別の面から見るならば、首相は財務省の事務方、とりわけ木下康司財務事務次官との会談に臨んでいるといえるだろう。

 そういえば、上記の表に示した9月11日、9月18日、9月20日の会談の翌日に、各種メディアは首相が消費税の引き上げを決断したのだと報じた。憶測でものを言ってしまえば、首相との会談に臨んだ者またはその側近の人々が、首相は消費税の引き上げを決断したようだと各種メディアに伝えたのだと思う*2。消費税引き上げ問題について最近発言を控えているように見える首相に代わって、官邸で首相と会談した人やその側近の人が、首相の考えはこのようなものだと解説めいたものを話せばどうなるか。メディアはその解説に飛びついて首相の決断なるものを報じてしまうだろう。

消費税引き上げ問題に対して自民党税制調査会は首相の意向を理解しようとしない

 今月中の自民党税制調査会の幹部の言動を眺めてみると、消費税引き上げ問題に対して自民党税制調査会が首相の意向を理解できていないのではないかと疑わざるを得ない。

  • 朝日新聞2013年9月05日朝刊の記事 朝日新聞デジタル:消費増税反対論、自民税調が警戒 党内に手厚く説明へ - ニュース によると、「野田毅税調会長ら税調幹部は来年4月の消費税率8%への引き上げで一致。反対論の芽を早めに摘もう」としており、税調幹部の額賀福志郎財務相は9月4日、派閥研修会にて「安倍首相が消費増税を決断しやすいように環境づくりをすることが我々の使命だ」と明言している。
  • 先述の日経新聞の記事によると、9月11日の会談で首相は野田毅税調会長に「税制でもレジームチェンジ(体制転換)が必要だ。今までになかったことを考えてほしい」と迫っていた。そして、自民党税制調査会幹部は、自民党税制調査会には首相官邸から情報が直接伝達されず、財務省経由で漏れ伝わってくることを嘆いており、税制面の改革について「首相がここまで本気だとは思わなかった」と心情を吐露している。
  • 産経新聞2013年09月17日東京朝刊「自民税調の威光に陰り 法人減税、甘利氏押し切る?」では、発言の日時は不明であるが、野田毅税調会長は法人税減税について「(月末までの)秋の陣では課題として検討していない」と断言しているようだ。また同じ記事によれば自民党税制調査会の幹部が法人税減税に否定的であると述べたらしい。

 これらの話をまとめるとこうなる。自民党税制調査会は首相が消費増税を断行せざるをえない「環境づくりをすること」に余念がないようだ。その自民党税制調査会には首相官邸から情報が直接伝達されておらず、財務省を経由して漏れ伝わってくるだけである。もっとも、首相官邸財務省にどれほどの情報を提供しているのか定かでは無いが。首相が自民党税制調査会の会長に対し官邸で直接税制面の改革を求めても、自民党税制調査会の会長も幹部も首相の改革の意欲を軽視してしまった。

 思うに、自民党税制調査会の会長や幹部と首相は消費税引き上げ問題に対して大きく異なる見解を抱いており、その溝は埋まりそうにない。

おわりに

 このエントリーでは消費税引き上げ問題のキーパーソンと私が思う人物の言動に着目してみた。官邸で首相と会談を行った人や時間を表でまとめれば、いくつかのことに気づく。首相が官邸で麻生財務相と会談をするときには木下康司財務事務次官の影響を排除することが難しいように見える。首相は実際には財務省の事務方、とりわけ木下康司財務事務次官との会談に臨んでいるといえるだろう。また、自民党税制調査会の会長または幹部と首相が官邸で会談したのは今月一度きりである。そして、偶然かもしれないが、消費税引き上げ問題のキーパーソンと私が思う人物と首相との会談の翌日に、首相が消費税引き上げを決断したとの情報を各種メディアは報じたのだった。
 消費税引き上げ問題に対して自民党税制調査会が首相の意向を理解しようとせず、今も理解しようとしていないことは言うまでも無いだろう。

 今週中の首相の予定の大半は外遊であるから、首相との会談を経て消費税引き上げ問題に関する首相の意図を解説する人はいない。そうなると、首相が消費増税を断行せざるをえない環境を上述のキーパーソンが首相外遊中に入念に整備し完成させるかどうかが衆目を集めるだろう。