blechmusikの日記

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NPO法人「大雪りばぁねっと。」関連の事件から学ぶこと: 事件報道の概要

  1. はじめに
  2. 事件報道の概要 ←ココ
  3. 考察
  4. 仮説
  5. おわりに
  6. 追補

大雪りばぁねっと。の資金枯渇問題

 事件報道が始まったきっかけは、山田町災害復興支援隊を組織する大雪りばぁねっと。の資金枯渇問題であった。

  • 「137人に給料払えず 山田、被災者雇用のNPO 事業費使い切る」(朝日新聞2012-12-12岩手版)
  • 「山田町 復興支援NPO 給与支払えず 大雪りばぁねっと」(読売新聞2012-12-12岩手版)
  • NPO法人「大雪りばぁねっと。」:山田町から震災雇用事業委託、資金不足で活動停止 今月分給与支払えず 」(毎日新聞2012-12-12岩手版)

 発災から2周年の日である2013-03-11には、フジテレビの夕方のテレビ番組「FNNスーパーニュース」でこの問題が取り上げられている。

 大雪りばぁねっと。の資金枯渇問題を簡略化して図で示すと、つぎのようになる。

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 大雪りばぁねっと。に山田町から渡された金はどのようなものか。それは、税金を原資とする、国の緊急雇用創出基金がもとになっている*1。これが国から岩手県に交付され、さらに岩手県から山田町へと補助金交付契約により渡されたものなのだ。
 図の中心に置いてある大雪りばぁねっと。から伸びている線の先に注目してほしい。そこには従業員と他の業者がいる。大雪りばぁねっと。の資金枯渇問題によって、従業員は給与を受け取ることができなくなり、他の業者は売掛金を回収できなくなる。なるほど、2013-01-19の朝日新聞の報道によるとNPO法人の業者への未払い金は少なくとも1億6500万円まで膨らんでいるのだから*2、債権者が我先にと財産をとり押さえようとするかもしれない。そこで債権者が破産手続開始の申立てをすれば、債務整理は裁判所が関与するものとなり、残っているNPOの財産を債権者に公平に配分することになる。とはいえ、NPO法人自身が自己破産をしない限り、結局、債権者が管財人費用を負担しないと破産手続を利用できないのだ。今では、宮古労働基準監督署NPO法人を事実上の倒産状態と認定したので、従業員に対しては2012-12の未払い給与分の8割が立て替え払いされることとなっている*3
 続けて目を向けるのはオール・ブリッジ社と「御蔵の湯」建設会社である。後者が「御蔵の湯」を建設するにあたり、前者と後者はどのような関係にあるのかが問題となった。というのも、緊急雇用創出事業を利用する団体については財産取得が厳しく制限されているのだが、「ペーパー会社ともいえる」*4リース会社のオール・ブリッジ社を活用して、緊急雇用創出事業費を支出してきたのではないかという疑いが出てきたのである。実は、後者はNPO法人から支払いを未だに満足に受けていない業者の一つであるが*5、単に未払い金を回収できていないだけではなく、緊急雇用創出事業関連の不明瞭な構図に巻き込まれた企業なのであった。
 図では示していないが、NPO法人が不適切な物品を購入していたと推測する人もいる。その視点から構成された特集番組が、先に述べたFNNスーパーニュースのコーナーであった。
 一方では、このように何かしら不正流用をしていたのではないかと、疑念を抱いてNPO法人の活動を批判的に見る人がでてきた。他方、岡田氏は疑惑自体を断固として認めていない。岡田氏は「不正流用はない。事務所に領収書は段ボール箱三つほどある」といい、さらに山田町に対して名誉毀損での刑事告訴も示唆しているようだ*6


岩手県山田町と大雪りばぁねっと。

 続けて、山田町と大雪りばぁねっと。の関係に焦点をあててみたい。ここでも図で当該関係をまとめてみた。ブログの画像処理上、投稿した画像が縮小されてしまっている。より大きい画像を入手するには、下記のWebSequenceDiagrams.comのページを開けばよい。※2013-04-06に図を差し替えた。


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 いくつか気になることがあるので、一つずつ触れていこう。山田町と大雪りばぁねっと。との強い結びつきを象徴するのが、山田町内の宿泊施設「ケビンハウス」の使用貸借、言い換えればタダ貸しである。NPO法人側弁護士によると、山田町はNPO法人に対して「無条件で」貸し出している*7NPO法人に使用貸借をした山田町は、当初、条件を付さないで使用貸借することについて、町にとってのリスクを何ら考慮しなかったのだろうか。NPO法人を信頼していたであろうことを最大限考慮しても、不思議なものである。
 山田町の動きの中でも理解に苦しむのが、2011-05-02に、岡田氏に山田町災害対策本部物資センター主幹を委嘱したことである。実は、ちょうどこの日に、岩手県社会福祉協議会の専務理事、岩手県地域福祉課長、全国共同募金会の担当者3名が山田町を訪れ、NPO法人と手を切ることを助言したらしい。2013-03-05の岩手県商工文教委員会 山田町のNPO法人問題に関する質疑大要で、斉藤信岩手県議会議員はつぎのように説明している。

「全国から駆けつけたボランティアから毎日のように県社協に苦情がきた」と。大雪りばぁねっと。と軋轢を起こしていると。本来ボランティアは自己完結型だが、勝手な物を買って、それを社協に請求していると。ボランティアにあるまじき事態だと。5月2日の時点で毎日のように苦情が来たから、県の社協の専務がわざわざ町長に「いかがなものか。北海道に帰ってもらったほうがいい」と指摘した。

 全国から山田町に駆けつけたボランティアが、ボランティアとして活動していた大雪りばぁねっと。の行動を目の当たりにし、その行動に異を唱え続けていたのだ。これがどれほど正確な情報かは分からない。そうはいうものの、前記の三者が山田町を訪れて警告を発するという異常な自体を考えれば、非常に確度の高い情報だと思う。
 このような警告を県から受けた当日に、山田町の災害対策本部の一員として、山田町は岡田氏を迎える(ただし無給)。未だに身元を明かさない岡田氏を、である。なぜなのか。理由は定かでは無いが、当時の町長がNPO法人を信頼していたことは、つぎの報道からもわかる*8

 11年5月2日には、県社協の職員と共に「このまま仕事をしてもらっていていいのか」と当時の沼崎喜一町長に相談したが、沼崎前町長は「(法人は)よくやってくれている」と話したという。

 ここから読み取れることは何だろう。それは、大雪りばぁねっと。によって山田町社会福祉協議会が何かしらの圧力を受けている、と外部ボランティアが批判的に見ている構図を、山田町として是正する姿勢を対外的に示さなかったと言うことである。いやむしろ、岡田氏を山田町災害対策本部の一員に添えることで、その構図を維持することを示した、といえるかもしれない。
 緊急雇用創出事業に関する契約が随時変更され続けたことに関しても、その真の意図するものは明らかでは無い。ここにおいても、NPO法人に対する山田町の厚い信頼が背景事情として存在していたのだろうか。
 上述の図では省いているが、山田町と大雪りばぁねっと。の関係は仮設店舗関連の件にも及んでいるように見える。これについては後述する。

岩手県と大雪りばぁねっと。

 つぎは岩手県と大雪りばぁねっと。間の関係を説明しよう。岩手県と大雪りばぁねっとの間には山田町が介在していることを考慮すると、岩手県と大雪りばぁねっと。間はつぎのような図にまとめられる。こちらの画像も縮小されているので、WebSequenceDiagrams.comの下記のページを開いてほしい。※2013-03-26、図の誤りを訂正した。

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 岩手県と大雪りばぁねっと。間については大別して3点に注目したい。まずは2011-05-02の、岩手県から山田町に対する警告である。先述のとおり、大雪りばぁねっと。との関係を再考するよう岩手県は山田町に問い糾したのだった。岩手県が大雪りばぁねっと。に対して警戒感を抱いた最初の機会はこの時点とみて間違いあるまい。
 二点目は2011-12-28と平成23年度(2011年度)の事業の精算準備時に、岩手県が大雪りばぁねっと。の経理記録等の整理に不備を発見したことである。ただ、これは岩手県と大雪りばぁねっと。間の直接の問題ではなく、岩手県と山田町の問題だということに注意すること。あくまでも岩手県と山田町間での補助金交付契約に起因する問題なのである。岩手県はまず山田町こそ責任を負うのだと念を押している。それは岩手県の雇用対策課長のつぎの発言に見て取れる*9

 県の責任だが、第一に、契約当事者である発注者においてその点については責任を負うと確認していただくこと、あわせて県としても、事業の規模に応じたそれなりの注意を払っていく必要があろうと考えている。

 大雪りばぁねっと。の会計を岩手県が精査していればこのような事態に至らなかったであろうと、斉藤議員は県の責任を追及し続けているが、それは行政運営上の政治的な責任追及にとどまるのであって、法的なそれには及ぶことはあるまい。
 三点目は、諸々の費用をリース経費の範疇内と見るか否かに関するやりとりである。図中では、御蔵の湯建設に関するもののみを取り上げている。このやりとりは岩手県と大雪りばぁねっと。間ではなく、岩手県と山田町間のものであった。実質的には山田町側の解釈は大雪りばぁねっと。の立場を代弁したものだ、と見る人もいるだろう。なるほど、大雪りばぁねっと。の運営にとって有利となるよう、山田町が動いていたように見えるかもしれない。しかし、山田町自身にとっても、当該支出がリース経費の範疇内かどうかは、重要な意味を持ってくる。そう、補助対象外の支出だと岩手県が判断すれば、最終的には山田町が岩手県に対していくらか支払うことになるかもしれないのだ。2012年度だけでも「事業費約7億9000万円のうち補助対象外とみられる支出が「億単位」であった」*10というから、山田町は実質的に相当負担せばねなるまい。そのような立場にいる山田町にとって、大雪りばぁねっと。の資金の支出方法は、自治体として関心を持たざるを得ないものといえよう。
 2011-06-15の意見交換会については、まだ報道がなされていない。これについても後述する。

北海道旭川市と大雪りばぁねっと。

 大雪りばぁねっと。をNPO法に基づき指導・監督する北海道旭川市は、事態の推移を眺め続けている。大雪りばぁねっと。の財政状況の悪化に伴うNPO法人の解散が考えられるものの、今現在は、有効な策を講じることはできていない。

*1:震災等緊急雇用対応事業。

*2:朝日新聞2013-01-19岩手版「NPOと契約打ち切り 宿舎から退去要請へ 山田町」

*3:読売新聞2013-02-19岩手版「「大雪」は倒産状態 認定 宮古労基署 未払い給与立て替えへ」

*4:読売新聞2013-01-25岩手版「「補助対象外」県が撤回 NPO大雪 無料浴場整備」

*5:朝日新聞2013-01-19岩手版「NPOと契約打ち切り 宿舎から退去要請へ 山田町」

*6:読売新聞2013-02-21岩手版「山田町の雇用事業NPO休止:不明朗会計 旭川市調査「新たな事実ない」 NPO認証取り消し「相当時間かかる」」

*7:読売新聞2013-03-09岩手版「「大雪」借りた町施設 未返還 ケビンハウス 私物残りカギも交換」

*8:読売新聞2013-02-26岩手版「NPO大雪 「11年度から既に破綻」 第三者委」

*9:2013年3月5日 商工文教委員会 山田町のNPO法人問題に関する質疑大要

*10:岩手日報2013-03-14「岩手・山田NPO 補助対象外支出 億単位 町が実績報告書」