読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

blechmusikの日記

キー・カスタマイズ・ソフトウェア "DvorakJ" の覚え書きをはじめとして様々なことを書いています。

AAO Consensus Meeting という講演会に出席した

目次

  • はじめに
  • 一般講演の内容
  • 特別講演の内容
  • 一般講演についてのコメント
  • 特別講演についてのコメント
  • 講演全体についてのコメント
  • おわりに

はじめに

昨日千駄ヶ谷区民会館で催された AAO Consensus Meeting という講演会に出席した。プログラムの内容は次の通りである。ただし、会場の利用時間の都合上、最後の情報交換は省略された。

  • AAO Consensus Meeting の趣旨の説明*1
  • 一般講演
    • 斉藤雄一郎*2「釜石ワークショップ参加報告」*3
    • 昆智矢*4「縁で繋がる東北復興」*5
  • 特別講演
    • 大堀研*6希望学と釜石」*7
    • 瀬戸元「巨大津波から命(み)を守る――助けるも また助かるも 鬼となれ――」*8
  • 情報交換

以下では、まず簡単に各講演の内容を(覚えている限り)まとめてから、それらに対してコメントを付す。内容に誤りがあるならば、ご指摘ください。


一般講演の内容

「釜石ワークショップ参加報告」
  • 釜石市において「復興まちづくり集中ワークショップ」を開催した*9
    • 4月には市側が選んだ市民のみ参加、6月には釜石市民であれば誰でも参加可能
  • 著名な伊東豊雄*10がこのワークショップに参加
  • 6月のワークショップでは……
    • 全参加者中釜石市民がしめる割合は半分未満だった
    • 新日鐵が有している中番庫を開放するよう求める、といった案が出された*11
    • 市民による案が出来上がったとは考えられない
  • 質疑応答
    • 伊東豊雄釜石市に縁があったのか?
      • →震災前後を通じ、直接は無かった。
    • このワークショップの成果がどの程度参考にされるのか?
      • →不明
    • 地盤沈下を前提としたうえでのワークショップだったか?
      • →(そういえるかもしれない。)地盤沈下している土地をかさ上げすればよいのではないか。
「縁で繋がる東北復興」
  • 虫除けとしてキャンドルを作成(キャンドルにアロマを入れる)、配布
    • 足立区の千住の落語家「古今亭(日本ニコプロ)駿菊」*12が作成開始
      • 落語のチャリティイベントは宮城県の仙台と南三陸、岩手県の山田町で行った
    • 山田町でのキャンドル配布の際、山田町の役場よりも山田町観光協会の助力を得た
  • 縁は重要
    • NPO団体から物資の提供を受けた
    • 山田町を訪れた人物が「光の茶会」という番組を ustream で放送している*13
    • 山田町では……
      • NPOに入らないと宿泊場所を確保しにくい
      • NPOが、NPOに加入していないボランティアに作業を割り振ることがあった
    • NPO団体に入ってしまうと、身動きがとりにくくなる恐れあり
  • 義捐金や道具を被災者個人に渡したい
    • 雇用につながる支援を推進する
  • 質疑応答
    • 山田町では、観光協会が落語のイベントの場所確保を行ったとのことだが、仙台と南三陸ではどうしたのか?
      • →仙台では、それなりに復興が進んでおり、イベント場所は独自に探し出した
      • →南三陸では、ホテル観洋でイベントを開催したが、開催可能な施設はこのホテルくらいだった(つまり、選択肢が無かった)
    • イベントについて、山田町内での告知はどうしたのか?
      • →戸別の告知を避け、観光協会に依頼した。

特別講演の内容

希望学と釜石」
  • 釜石市を取り上げたのは、日本の行く末を反映していると研究者が考えたから
    • 第二次産業の衰退、高齢化など
  • 市民の手で釜石の希望を作り上げることこそ重要
    • そのためには対話が必要となる
    • 釜石市内のNPOの数に着目すると、対話をする雰囲気が強いとは言えなさそう
「巨大津波から命(み)を守る――助けるも また助かるも 鬼となれ――」
  • 3月11日の震災の一昨日、すなわち3月9日には……
    • 両石には1mの津波が押し寄せた(気象庁の発表では、釜石市の津波は0.4mだった*14
    • →両石湾の潮位調査を独自に行おうと考えた
  • 明治、昭和には……
    • 地震から30分で津波が到達していた
  • 3月11日の震災で、両石においては……
    • (瀬戸氏により設置された)潮位計が沖の方に流されていった
    • 住民に避難を呼びかけるため、購入しておいた(15万円もする)ワイヤレス・マイクを両石漁村センターに取りに行った
    • 30分で津波が来ると考え、住民を個別に助けに行かず、避難を呼びかけた
    • 以前の津波では「津波風」というものが吹いたが*15、今回はそれは無いものの以前よりも高い津波が両石を襲った
      • (誇張して言えば、)防潮堤が無ければ、恋の峠を越して鵜住居側を津波が来襲したかもしれない
      • 両石の犠牲者は、明治の震災では被害がなかった地域に避難したものの、津波に襲われてしまった
      • 瀬戸氏の見解では、両石を襲った津波の遡上高は26mぐらいある*16
  • 3月11日の震災で、釜石市街地においては……
    • 地震が来ても津波が来るとは考えていなかった模様
      • 釜石市民会館では、津波が来襲する寸前に人々が3階に上がって難を逃れた
    • 端的に言うと、昔から伝えられているはずの津波の脅威が、釜石市民には伝わっていなかったといえる
      • 釜石の犠牲者のうち、8割近くを45歳以上が占めていると考えられる*17
      • (生徒を含む)若者よりも高齢者の方が、津波の脅威を低く見積もっていた可能性あり?
  • 道路が無ければ希望はない
    • 三陸縦貫自動車道の釜石山田道路の開通式は、本当は、3月12日(発災の翌日)に行われる予定だった(!)。その予定を早めてもらったおかげで、今回の震災で当該道路が活用されたわけである
    • 釜石市の政治家(釜石市議会の議員のことか)は、道路整備について活発な活動を展開してこなかった
    • 道路整備をすすめるよう、鵜住居町等の関係者が上京して、当時の国交大臣に直接直訴した
  • 質疑応答
    • 両石の津波については釜石市内外の人が関心を有していると思うので、解説動画を作っては?
      • 神戸大学の研究者の助力を得て、解説動画を作成している最中である
    • 両石の津波の動画および解説動画をインターネット上で公開する見込みはあるか
      • 住民の感情を考えると、その見込みは無い
      • 防災研究者や防災関係者については、両石の津波の動画を DVD に焼いて、配布している。詳しくは瀬戸氏に問い合わせること
    • 将来的に津波に襲われるであろう後世の人々や東南海の人々などに、今回の震災をどのように伝えるのか
      • 教訓と伝承によってきちんと伝えていく。そのために簡易な冊子を作った。
      • 田舎において体裁を守らねばならないために人助けすることもあろうが、しかし、「鬼となる」、すなわち自分が助かることを優先するのも大切である

一般講演についてのコメント

「釜石ワークショップ参加報告」については、質疑応答にあるとおり、現実的な案としてどれほど意味があるのか疑問である。まさかとは思うが、復興に割り当てられる財源や資源を豊潤なものだと考えているのだろうか。住民が負うことになる財政の負担と便益をどう検討していくか、というように現実的に考えていくべきだろう。この点は釜石市復興まちづくり基本計画「スクラムかまいし復興プラン」*18というものにも共通している。本当に復興を推し進めたいならば、財政事情を踏まえた分析をもとに案を作り上げるべきだろう。

「縁で繋がる東北復興」については、山田町のNPOに問題があるというよりは、社会福祉協議会のボランティアセンターが機能不全に陥っていた(陥っている)のではないか、と考えた。山田町以外のボランティアセンターに行ったのであれば、それらを比較対照して、ボランティアセンターの運営や支援団体間の連絡といった状況をまとめあげてほしい。
そういえば、上記のまとめでは触れなかったが、避難所となった山田高校の体育館になぜ仕切りが無かったのかを追求してはどうだろうか*19。私が関心を有しているのは、仕切りを設けるか否かの判断は誰が行っていたのか、その者にはどの程度の裁量がゆだねられていたのか、仕切りを設置すると誰かが決めたら、その者はどのような手順で仕切りを入手し設置することになっているか、である。これらの点は今後の震災において大いに参考となるだろう。


特別講演についてのコメント

希望学と釜石」は、前半部分中、示されたスライドのうち棒グラフで表しているデータをよく理解できなかった。データに関して、言い換えると、標本はどれほどのサイズなのか、標本が母集団を適切に代表するよう、どのような点に留意して調査したかを、口頭でよいので簡単に説明すべきだったろう。そのような解説を一切省き結論だけ述べることに、どれほど意味があるのか皆目不明である。
後半部分では、NPO法人の数に着目して説明していたが、NPO法人という法人格を有している団体以外の活動をどのように考えているかが分からなかった。当たり前のことだが、NPO法人の認証を受けなくとも、市民は社会貢献のたぐいに関わることができる。それだけではない。市民の手で対話を推し進めたいなら、市議会の議員を通じて意見の調整をはかる、というように法的にも政治的にも公的な制度を利用することは考えないのだろうか。さまざまな手段を通じて市民が対話できるということを包括的に分析してから、そのうえで、個別の手段の長所と短所を論じるべきだと考える。
前後半を通じて私が考えたのは、講演者は具体例が何を代表しているのかを適切に解説すべきだった、ということである。一例を出すと、講演者が好意的に紹介したナチュラルミネラルウォーター 山華の雫の主である八幡氏は、私が知る限り、林業の経営で財を蓄えた方である。釜石市内にそのような人物が何%程度居り、また、どのような職業に従事しているかまで調べているのだろうか。この点については講演中に解説されなかった。個々の事例を取り上げて話すのではなく、全体においてどのように位置づけられる事例なのかをわかりやすく提示する必要があるだろう。

「巨大津波から命(み)を守る――助けるも また助かるも 鬼となれ――」では瀬戸氏の防災意識の高さを改めて知ることができ、とても有意義な講演を拝聴したと考えた。津波が来襲する可能性を日頃から考えていたからこそ、瀬戸氏はさまざまな対策を現に取ってきたのである。今後は震災を伝承する者として活動されるとおっしゃっていた。ますますご活躍下さることを、心より期待しております。
瀬戸氏の講演で分からなかったのは、中・高齢者の(津波に対する)防災意識を高めるにはどのような活動をすればよいか、である。瀬戸氏によると、犠牲者の年齢層別の割合から察せられることは、釜石市内の中・高齢者が高い防災意識を有していなかったことだという。もしもそうならば、つぎのような疑問が出てくるだろう。防災関係者による防災啓発活動によって、中・高齢者がどれほど危機感を覚えるのだろうか?こう言い換えることもできるだろう。防災関係者が津波の危険性をどれほど説けば、中・高齢者はすぐに避難するようになるのか?私が危惧するのは、防災の関係者のみが津波被害の動画を見られるようになる結果、防災関係者の危機意識と、津波に襲われるであろう地域にいる住民の危機意識が乖離してしまうことである。津波の動画を住民に直接見せることで危機意識を高めるか、それとも防災関係者の解説によって危機意識を高めるのがよいのだろうか。どちらがより効果的なのかは実証的な研究によって明らかにされれば理想的ではあるが、それを望むのは難しいかもしれない。
動画の公開について一点触れておこう。もちろん、被災した住民への配慮という面から、インターネット上での動画公開を差し控えるというのは理解できる。そうはいうものの、両石の津波の動画は、発災からちょうど4ヶ月後の7月11日の朝8時の番組「とくダネ! - フジテレビ」で放送されたのである*20。この番組を視聴した人々に対して、せめて、津波の解説動画を公開してもよいと思う。


今回の講演全体についてのコメント

今回の講演全体について言えることは、釜石の政治(とりわけ市議会)に関する関心がやや弱いということだろう。瀬戸氏は道路建設の文脈で釜石の政治について言及していたが、その他の講演者は言及していなかったと思う。市議会の権限を考えると、市議会(および市議会議員)の動向を踏まえずして復興云々という話はできまい。市議会が住民の意見を反映する場であることを思い起こすべきである。基礎自治体の行政には、政治的な側面、すなわちどのような政策を優先するかと判断することと、行政機能の遂行の側面があると思う。前者については、後者とは異なり、市議会による意見の調整が求められるだろう。それぞれの市議会議員が政策論をどのように展開し、復興を推し進めようとしているかは刮目に値する*21


おわりに

様々な話に言及したが、今回の講演会を聴講して私が思ったことはつぎの三点にまとめられる。それは、第一に、財源に限りがあるという現実から目をそらすべきでないこと、第二に、個々の事例が全体においてどのように位置づけられるのかを意識すべきこと、第三に、選挙で選ばれた議員による(公的な)政治の機能を検討すべきこと、である。同様の講演または会合が後に開催されるならば、これらの点を踏まえて議論する必要があると思う。
今回のエントリーについては、以下の二冊の書籍が参考となるだろう。被災地の復興に関心を有する者なら誰でも、とくに、前者の「第2章 災害と経済システム」中の「第4節 贈与経済」と「第5節 巨大災害からの経済復興とその課題」を読むべきだと思う。

減災政策論入門―巨大災害リスクのガバナンスと市場経済 (シリーズ災害と社会4)

減災政策論入門―巨大災害リスクのガバナンスと市場経済 (シリーズ災害と社会4)


朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機


なお、今回の講演会については、現在、他の出席者*22が簡単にまとめている。また、その方とは別の方が文字おこしをするかもしれない*23

後日追記

関係者へのリンクを追加したり、文章を少々書き換えた。

*1:司会進行を務めるyuki sasaki (tanukipark) on Twitterによる。

*2:yuichiro saito (euro_tweet) on Twitter

*3:演者紹介 その1: がんばっぺし、岩手!

*4:Thomas sorry (thomsorry) on Twitter

*5:演者紹介 その2: がんばっぺし、岩手!

*6:ohori ken (reinhook) on Twitter

*7:演者紹介 その3: がんばっぺし、岩手!

*8:演者紹介 その4: がんばっぺし、岩手!

*9:http://www.city.kamaishi.iwate.jp/saigai/contents/kouhou/work_s.pdf や 釜石復興まちづくり集中ワークショップ | NEWS | ArchiAid参照。

*10:伊東豊雄 - Wikipedia

*11:東日本激災復興新聞 ≫ 中番庫にスタジアム建設を WSで市民らが提案 (釜石市)参照。

*12:http://twitter.com/#!/syungikusishou、落語見聞録参照。

*13:http://www.ustream.tv/channel/tame5

*14:気象庁 | 平成23年報道発表資料 | 平成23年3月9日11時45分頃の三陸沖の地震について

*15:港近辺にあった掘っ立て小屋がその風でつぶれてしまったとのことである。

*16:配付資料2ページ目の釜石市災害対策本部の「2 津波の概要」によると、両石湾両石漁港背後地の遡上高は19.3mとなっている。これは土木学会の参考値のようである。

*17:配付資料6ページ目(2)人的被害「●各年代における被災人口の割合」

*18:釜石市復興まちづくり基本計画について - 釜石市

*19:講演者によると、その避難所は雰囲気が悪くなっており、盗難が結構あったとのことである。

*20:ものすごい津波の動画をあげていこうぜ15のレス479--492参照。

*21:なお、隣町大槌町においては、大槌町議会議員を政策論の観点から選ぼうという動きが見られるようになってきた。asahi.com:ゼロからの選択 大槌町(上)-マイタウン岩手asahi.com:ゼロからの選択 大槌町(中)-マイタウン岩手asahi.com:ゼロからの選択 大槌町(下)-マイタウン岩手釜石市でも、政策論の観点から市議会議員を査定する時が訪れるのだろうか。

*22:EDDIE (EDDIEtheBOOZER) on Twitter

*23:Twitter / @kiyoppi2010: AAO講演会、テキスト起こししよっかな。簡単にまとめ ...