blechmusikの日記

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被災地である釜石市と大槌町の情報を集約するために、wikiを立ち上げた

はじめに

特定の被災地全体で何が起きているのかをマスコミが把握できていないので(把握する気がないのかもしれないが)、把握できるような情報を集めるwikiを開設した。

wikiではまだまとめられていないが、現在起きている問題点が3つ浮かんできた*1

  1. 被災地内部で食料分配がうまくいっていないこと
  2. 犯罪が横行していること
  3. 物資の流れを司る緊急災害対策本部の機能が停止していること

以下で順に説明しよう。
(後日追記:読みやすくするため、文章の一部を改変した。)

被災地内部で食料分配がうまくいっていないこと

第一は、被災地内部での食料の分配が機能していないことである。自宅を失った方、すなわち避難所の方々には食料が行き届きはじめており、かつ、マスコミはこの方々の生活を報道している。他方、自宅を失っていない方は、食料を自力で調達しなければならない。前者はもちろんのこと、後者の、つまり被災地の市場から物を購入し損ねている人々の惨状も伝えるべきだろう*2


(後日追記:3月27日になり、つぎのような記事が公開された)


(後日追記:燃料の調達の難しさは所与のものとして敢えて触れなかった。物資の窮乏について、以下のエントリーにリンクしておく。)


(後日追記:大槌町に入ったTERUさんは、3月25日時点で、避難所以外の人に物資が行き届いていない様を生々しく描写している。)

犯罪が横行していること

第二は、犯罪が横行していることである。先日、バールを使って銀行のATMから金銭を盗もうとした犯罪は報道された*3。犯罪はこれだけではない。自衛隊や他国の救助隊が多数居る「釜石市内でも家人不在の民家が物色されたり、ガソリンを抜き取られる被害が出始めている」*4。これが現実である。自衛隊も他国の救助隊も居ない地域はどうだろうか。治安上の懸念から、そのような地域には、マスコミは入りたがらなくなるだろう。そうすると、治安の悪化を止めることは難しくなると思われる。せめて、マスコミは、把握できる分の治安情報を積極的に流すべきではないだろうか。

(後日追記:強姦と強盗に関するtwitter上のつぶやきを、コメント欄にまとめている。)

(後日追記:釜石商工会議所の職員は、3月22日付けのエントリーで、つぎのように報告している*5

 久しぶりに職員が顔を合わせ、色々な情報交換ができました。皆口をそろえて言うのが、「泥棒」の怖さです。津波被害にあった商店や、避難して不在になっている民家に侵入して窃盗を働いているらしいのです。

 私が一時避難していた小川町近辺でも、「留守宅に窓ガラスを割って侵入し、食料がないか物色する人がいる」という情報がありました。津波被害にあった銀行に侵入しATMから現金を抜き取ろうとして現行犯逮捕されたというニュースも報道されました。
 最近はガソリン不足ですので、津波に流され動かなくなった車はもちろん、通常に動く車からもガソリンを抜き取るケースもあるようです。灯油を盗まれた話もよく聞きます。

 自衛隊などによる復旧作業も順調に進んでおり、街なかへの道路もスムーズに通れるようになってきました。街なかに出入りする人も日に日に多くなってきています。同時に治安の悪化が進んでいるようです。

(後日追記:震災当日から22日までの約10日間分の治安情報が発表された*6

 県警は23日、東日本大震災があった11日から22日までに県沿岸部で発生した事件件数をまとめた。大船渡、釜石、宮古の3署管内で窃盗13件、暴行2件があった。震災前と件数に大きな変化はないが、県警幹部は「届け出が出ていない例も相当あるとみられる」と話す。

(後日追記:以下の記事中の写真中を参照。大船渡市の避難所の張り紙に「注意!盗難、暴行やいたずら等が発生しています」と記載されている。)

(後日追記:大槌町稲荷神社の十王舘勲氏は、僕の避難所長日記(14)《三月十五日(火)天気:くもり》において、大槌町内での窃盗に関し次のように言及している。複数の人物から同様の目撃情報を伝え聞いたのだろうか、十王舘氏が「確かに」と断定する根拠は不明である。)

 ・中国大使館より……国内に同国籍を持つ中国人の引き上げを決めた
 特記…町内に在住する中国人は、確かに怪しい行動を取っていた(窃盗)。文化の違いなのだろうが、大使館の迅速な行動に安堵した。

物資の流れを司る緊急災害対策本部の機能が停止していること

第一と第二がミクロの問題だとすると、第三は、マクロの問題である。食料分配に関する指揮系統の混迷が深刻化しているのだ。日本経済新聞の記事*7にはこうある。

 未曽有の災害となった東日本巨大地震に立ち向かう政府の危機管理に批判が強まってきた。阪神大震災以来、政府は危機管理体制の強化を進めてきたが、地震と津波、原子力発電所の事故と同時に発生した複合危機に対応しきれていない。政治家と官僚の連携や民間企業との意思疎通も十分とは言えない。危機はなお進行中で、態勢の立て直しは待ったなしだ。
 「首相官邸は原子力発電所の事故対応に追われ、被災地の復旧・復興計画にまで手が回っていない」。内閣官房のある幹部はこうこぼす。
 食料や燃料などの不足に真冬並みの寒さが襲う被災地。救援物資を海上から運び込むため、宮城県の仙台塩釜港と岩手県の釜石港、宮古港を16日までに復旧し、国土交通省は輸送船も船会社9社の17〜18隻を確保した。だが、これら船舶はいまだに待機中だ。
 どんな物資をどこに運ぶかは首相官邸の緊急災害対策本部が一元的に決めるが「具体的な要請が下りてこない」(同省海事局)ためだ。
 政府内には地震発生後、様々な組織が設置され、首相と全閣僚の緊急災害対策本部だけで開催数は12回に及んだ。官邸の首相執務室前にはレクチャーのための官僚が列をなす。だが「菅直人首相と枝野幸男官房長官で、適切な判断ができているか」となると、関係者は口を濁す。

そう、物資の流れを司る緊急災害対策本部が機能停止に陥っているため、物資のストックはあるものの、被災地に物資が流れていない。原子力発電所の件の重大さは分かる。だが、それを理由として、この機能停止を看過するわけにはいくまい。緊急災害対策本部の権限をどこかに委譲すれば、ここまで判断できなかった物資の流通を解消できるようになるのではないか。マスコミは、物資の流通に関する権限をどこに委譲すればよさそうか、その際の問題点は何か、といった建設的な話に焦点を当てるべきだと思う。現時点の報道は、物資が足りていません、輸送が停止しています、といった視点に終始しているのがほとんどといえよう。この程度の報道でよいのだろうか。権限を有していながらその機関が適切に行使しない。これこそ、今起きていることなのである。この事態を一刻も早く打開するよう、マスコミは現状を冷徹に分析してほしい。

(後日追記:以下の Economist 紙の記事で説明されているのは、各種規制のせいで、物資の流通が妨げられていたことである。)

原文
Disaster in Japan: Come back in ten years' time | The Economist
日本語訳
10年後にまた来て見てくれ 惨禍に見舞われた日本人の不屈の精神 JBpress(日本ビジネスプレス)

終わりに

こう表現するのも辛いが、マスコミはお涙頂戴の類の話を皮相的に取り上げ、流している場合ではない。飢えと、暴力など危害からの保護の問題を真剣に取り上げるべきである。

*1:ここでは釜石市大槌町の状況を念頭に置いている。そうはいうものの、他の被災地にも当てはまることだと思われる。

*2:物の供給をより活発にしたり、効率的な分配プロセスを提案するなど、対策はいくつかあろう。もちろん、対策の取り方は専門家の意見を参考にすべきであり、意味不明な政治的判断は不要である。

*3:津波被災地でATMから現金盗もうとした疑い : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

*4:窃盗被害から被災地守れ 消防団が夜間巡回

*5:岩手釜石から 東日本大震災 被災地の現状: 火事場泥棒ならぬ津波泥棒

*6:東日本大震災:窃盗13・暴行2件、沿岸部で発生 11〜22日、県警まとめ /岩手 - 毎日jp(毎日新聞)

*7:「政府、複合危機に立ちすくむ 動かぬ輸送船、沈黙の原子力安全委 「政治主導」機能せず:日本経済新聞」(2011/3/18 4:00 (2011/3/18 10:28更新))