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blechmusikの日記

キー・カスタマイズ・ソフトウェア "DvorakJ" の覚え書きをはじめとして様々なことを書いています。

「Dvorak配列を使用してキーボード入力を快適にする」第一回

Dvorak配列

Dvorak Advent Calendar の7日分を担当します - blechmusik2の日記に引き続き、私が担当する内容の目次を掲載します。

目次

  1. はじめに
  2. Dvorak配列の利点(以上、第一回
  3. Dvorak配列の欠点と対策
    1. 直接入力時の欠点と対策
      1. 修飾キーを使用するとき
      2. 修飾キーを使用しないとき(以上、第二回
    2. 日本語入力時の欠点と対策
      1. 欠点
      2. 対策
        1. 対策上重要な点
        2. DvorakY(以上、第三回
        3. ACTとACT09(以上、第四回
        4. DvorakJP(以上、第五回
        5. JLOD配列
        6. 私がおすすめする入力方式(以上、第六回
  4. おわりに
  5. 追補 Dvorak Advent Calendar エントリー一覧(以上、第七回

1. はじめに

私は、7日間を費やして、「Dvorak配列を使用してキーボード入力を快適にする」ことを説明します。
伝えたいことは以下の二点です。

  1. Dvorak配列の利点は、QWERTY配列と比較して、人間工学上すぐれていることである。
  2. Dvorak配列の欠点はいくつか存在する。その欠点は、他のキーボード配列を部分的に取り入れることで、補完される。

第一の点については「Dvorak配列の利点」で説明します。第二の点については、「Dvorak配列の欠点と対策」で個別に検討します。

2. Dvorak配列の利点

これまで、Dvorak配列の利点に懐疑的な見解が公表されてきました。「〔人間工学の〕諸研究は、Dvorak配列の利点が、〔QWERTY配列と比較して〕わずかであるかまたは全く存在しないことを例証してきた」*1と言われます。その根拠として参照されている文献を辿ると*2、つぎのことが示唆されていると分かるでしょう。すなわち、Dvorak 配列にはパフォーマンス上利点がかなりあること、Dvorak配列の習得には最小限の再訓練時間で済むこと、標準となっている QWERTY 配列のキー配置に比して、Dvorak配列の初期の学習率が同等かそれ以上であること、こういったことが立証されていないのです*3。「Dvorak〔配列〕がQWERTY〔配列〕に客観的に優位するとの、科学的に受け入れられる証拠は全く存在しない」と言い切る論者も出てきました*4
これに対し、Dvorak配列が人間工学上利点を有しているとの注目すべき評価が公開されました。これは、英語、ドイツ語、フランス語向けに、人間工学上すぐれたキーボード配列を生成する研究において述べられたものです*5。この研究の内容は、「先行研究がタイピングのスピードやキーボード配列の覚えやすさに主として焦点を当ててきた」*6のとは対照的です。研究内容を簡潔に見てみましょう。論文ではまず、キーボード配列を人間工学の観点から数値化しました。考慮要素は6つ、すなわち「アクセスのしやすさと負荷」("Accessibility and load")、キーの数("Key number")、交互打鍵("Hand alternation")、「同一の指の連続使用」("Consecutive usage of the finger")、跳躍の回避("Avoid big steps")、打鍵の方向("Hit direction")です*7。その上で、人間工学上すぐれたキーボード配列を作成したのです*8。最終的に、論文の著者は、Dvorak配列が人間工学上QWERTY 配列よりもすぐれていることを認めています*9
ここまでの話を簡単にまとめます。従来Dvorak配列の利点には疑いの視点が投げかけられてきたところ、最近の研究では、人間工学上Dvorak配列が利点を有していると解釈されるようになりました。


次回は、Dvorak配列の欠点と対策を説明します。

追記

加除訂正を施して、文章を少々短くしました。

*1:SSRN-The Fable of the Keys by Stan J. Liebowitz, Stephen Margolis at 18.

*2:A. Miller & J. C. Thomas, Behavioral Issues in the Use of interactive Systems, 9 Int. J. of Man-Machine Stud. 509 (l977).

*3:Hanes, Lewis F. Human Factors in International Keyboard Arrangement. In Chapanis, A. (Ed.) Ethnic Variables in Human Factors engineering. Baltimore, Md.: The John Hopkins University Press, 1975, 189--206 at 194.

*4:Liebowitz and Margolis at 18 note 31.

*5:Wagner, Marc Oliver, Bernard Yannou, Steffen Kehl, Dominique Feillet and Jan Eggers. 2003. Ergonomic modelling and optimization of the keyboard arrangement with an ant colony algorithm. Journal of Engineering Design. 14(2):187-208. < http://www.informaworld.com/10.1080/0954482031000091509 > (accessed 11 December 2010) at 205.

*6:Id. at 207.

*7:キーボード配列の評価の考慮要素 - blechmusik2の日記参照。

*8:実際に、著者はそのすぐれたキーボード配列を図で示しています。Wagner et. al. at 204 Figure 6.

*9:ただし、QWERTY配列よりもDvorak配列がすぐれている、と明示的に述べているわけではありません。ただしくはつぎのように記述されています。すなわち、人間工学上、作成したキーボード配列がQWERTY配列よりも41%、そしてDvorak配列よりも1.9%だけすぐれた値を算出した、というわけです。これより、Dvorak配列はQWERTY配列よりも約38%すぐれている、ということになります。