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blechmusikの日記

キー・カスタマイズ・ソフトウェア "DvorakJ" の覚え書きをはじめとして様々なことを書いています。

尖閣諸島での衝突を記録したビデオの件について

中国住み*1さんが中国の動画投稿サイト "youku" に投稿できなかった(つまり中国では何かしらの検閲対象になっていると思われる)件の動画を一通り見てみた。誰でも、船舶同士が牴触していることが容易に分かるだろう。動画については、つぎの gigazine のエントリーを辿ればよい。

以下、覚え書きをいくつか残しておこう。
今回動画が(組織内部の正当な公開手続きを経ていないと思われる状況で)公開された点について、事件を取り巻く状況を踏まえる必要がある。重要だと思われるのは、未だに、釈放された船長につき、起訴処分と不起訴処分のどちらとも判断されていないことだ*2。それだけでなく、その船長に対する起訴処分と不起訴処分のいずれかの決定が下される見込みが不明なのである制定法上、そのような状況で起訴処分か不起訴処分のいずれかを一定期間内に判断しなければならない、とは定められていない。極論を言えば、その判断をするのは数十年後でも数百年後でも構わないわけだ。このような情勢において、国民にいち早く情報を提供したいと考えた者が、リークにより動画を公開したと思われる。もちろん、国会内での審議が迅速に進んだ結果、正式な手続を経て動画が公開されればよかったのだが。
注視しなければならないのは、動画を公開した者の身元が明らかにされるかどうかだ。そう、情報源秘匿という問題である。
情報源秘匿というと私たちはどういうことを想像するだろうか。通例は、裁判において、メディアへの情報提供者が明らかにならないよう、メディアがなんとかしてその身元を秘匿することだろう。そのような事例における情報の流れは、以下のようになる。

通例の情報源秘匿事例
情報提供者→メディア→国民

今回はつぎのような構図になっている。

今回の事例
情報提供者→youtube→国民*3

そう、今回の事例は、情報提供者がメディアを介在せずに情報を国民に伝えたものである。報道の自由に関連して議論されてきた情報源秘匿の話がそのまま通用しない。もっとも、youtube を報道機関に類する存在と把握すればいいと考える人がいるかもしれない。しかし、youtube 側には原則として編集過程が存在しないこと等を考えると、この議論がどこまで妥当するかは分からない。
ではどう考えればよいのだろうか。一案として、情報提供者をジャーナリストとして捉えることがあろう。今回の件にこれをあてはめるとつぎのようになる。すなわち、ある者が、youtube を使用して、連日報道されている懸案の情報を国民に対し直接提供した、ということだ。情報提供者が国民に対して情報を直接提供するということは、情報提供者が従来のメディアの役割も担っていることになる。情報提供者が従来のメディアの役割を一時的に果たしうる時代が来た、と形容できるだろう。そうはいうものの、従来の議論にならったままで、そのような情報提供者の身元は果たして保護されるのだろうか。従来の情報提供者が行ってきた以上のこと、すなわち独力で情報を国民に届けてしまうと、身元が明かされるおそれが増大する、ということはないだろうか。そう考えると、この案を採用したからといって、情報提供者の身元が保護されるとは断定し難い。
結局のところ、そのような情報提供者を保護するシールド法が制定されることを望むしかないだろう。

更に追記

中国内の権力闘争を踏まえた、かんべえさんの解説が興味深い*5。北京閥から見た、嫌らしい日本外交というところか。もっとも、上海閥もそう見ているのかもしれない。

*1:中国住み (livein_china) on Twitter

*2:これに関連して、【尖閣衝突事件】船長の不起訴処分なく却下 那覇検審 - MSN産経ニュースを参照。

*3:もしかしたら、「情報提供者→情報受領者→youtube→国民」というように、情報提供者が直接 youtube にアップロードせず、他の者が youtube にアップロードしているのかもしれない。ここではそのような想定を捨象する。

*4:知ってた?…在日華僑アイドルグループが「尖閣は中国領」と主張 2010/10/23(土) 15:30:57 [サーチナ]幻の在日華僑アイドル『Angel Girl』、虚偽報道のツケとは 2010/11/04(木) 10:26:16 [サーチナ]参照。

*5:かんべえの不規則発言の<11月5日>(金)参照。